失体感症(しつたいかんしょう)

施術者というものは、施術が終了した時点で、患者さんの症状が大体何割くらい寛解した、
もしくはしていない、どういった状態になっている、という自分なりの感覚があるものです。
ただそれはあくまで施術者の主観的な感覚であるため、患者さんの感じ方とのギャップ
を埋めるべく質問をすることになります。

「どうですか?」

すると、時々ですが「(不安そうに)…先生、どうですか?」と逆質問されてしまうこと
があります。
私の施術が、変化を体感できないほど頼りないものだったのかもしれませんが…。

心理的・社会的要因によって引き起こされる身体の症状を心身症(しんしんしょう)と
いいます。
その心身症の病状を説明する概念の一つに、「失体感症(しつたいかんしょう)」とい
うものがあります。
失体感症というのはその名の通り、自身の身体感覚への気付きが失われる、つまり鈍
いということです。

感覚の中でも「不快」「痛み」という感覚は、つい避けがちになりますが、身体の異変
に気付く上では大切なメッセージでもあります。
もしそのメッセージを受け取れなかったり、あるいは無視することになれば、極端な場合
では過労死を招くことすらあります。

心身症の治療にも用いられるヨーガセラピーでは、一動作のあとには必ず一休止を入れ
ていますが、あれはただ単に休憩をしているのではありません。
動作による身体内の変化(脈拍、呼吸、体液の流れ等)を意識化する、繊細な身体から
のフィードバックを拾い上げるための大切な時間・プロセスだそうです。

そこでオススメですが、今度徒手療法を受ける機会があれば、今行われている施術に
よって、ご自身の身体がどう反応し、変化しているか、意識的にモニターしてみてはい
かがでしょうか?

はじめは痛い-痛くない、快-不快くらいの大雑把な感覚かもしれませんが、段々繊細
になっていくと思います。
特にお忙しい方にとって、自分の身体と向き合う、身体の声に耳を傾ける貴重な時間
になると思いますよ(色々面白い発見=気付きもあると思います)。

そしてそれはそのまま失体感症、つまり心身症の治療も兼ねることになり、より身体の
異変に早く気付き、自分の身体にもより親しみが湧くようになると思うのですが…、いか
がでしょうか?


参考:『心理学辞典有斐閣