仮面うつ病

ある方から、知り合いの女性(60歳代)についての相談を受けました。


ある方「…その人は去年位に長年勤めた所を退職されて、それからしばらくして何か歩きにくいなぁと思ってたら、それが段々ひどくなり、しまいにはほとんど半身が麻痺してしまったのね。
で、病院に行って色々な科を回ったけれど、はっきりした原因はわからず…。
それで最後に心療内科に行ったら、身体に悪いところはないんやけど、長年のストレスが原因でそれが身体の症状として出てるって…。
え~っ、何て言うたかな?かめ…かめ…」

 私 「“仮面うつ”違いますか?」

ある方「そう、それ!でもホンマに身体が動かないんですよ。そんなんが原因でそんな風になるもんやろか?」

 私 「割ときっちりした方と違います?」

ある方「うん、凄いきっちりしてはる。仕事も経理やったけど、私なんか時間とお金があったらすぐ旅行とか気晴らしに行くけど、その人はそんなん全然せんと、きっちりしてました。」

 私 「ありえる話やと思いますよ。」

ある方「えぇ~!?」


うつ病病前性格としては、仕事熱心でまじめ、几帳面であるが気分の切り替えが下手で物ごとにこだわるなどの執着性格や、気分の変動に周期性を認める循環性格などがある。”

 ~『心身医学標準テキスト第2版』医学書院 より抜粋~


仮面うつ病というのは、うつ病に特有の抑うつ気分、悲哀感を、身体症状があたかも覆い隠すかのように前面に出るため、こう呼ばれています。

私に相談された方ですら受け入れ難いのですから、ご本人の頭の中ではなおさら「どうして私が!?」で一杯だと思います。
(もちろん異常なしとされた諸々の検査が絶対とは言いませんが)


うつ病に対しては、病院ができること、ご本人ができること、周りの方ができること(“がんばれ”がNGというのは割合知られてますね)は、もちろんあります。

当院にできることに関して言いますと、以前心身症の特徴として自身の身体感覚が鈍くなる失体感症(1/12付)を紹介させていただきましたが、うつ病の場合も同様に、整体を通じて身体に入れた刺激を意識化してもらい、身体に対する感覚を取り戻していただくこと(大体鈍くなっています)と、対話・お話をすることが大きな柱になってきます(症状にもよりますが)。


ともあれ、やれることは間違いなくあります。

どうか、その方には希望を持ち続けていただきたく思います。