職人さん

ぎーこぎーこ、ぎーこぎーこ…。

お会計のあとも、何度も何度もノコギリを挽く動きを確認されているベテラン大工さん。

「…いけてますわ。この動きができひんかったんですよ。」


どんな方であれ、自分のイメージ通りに身体が動かなければストレスを感じると思いますが、とりわけ大工さんのような職人さんなら尚更のことだと思います。


この大工さんは、半年ほど前から右肩が挙がらなくなったという事で来院され、私なりに手を尽くしましたが、施術の終盤になっても症状にさほど変化は表れません。

時間も迫ってましたので、症状に囚われすぎず、今回はせめて全身のコンディションを出来るだけ上げて帰ってもらおうと頭を切りかえたところ、背中の胃のツボ(左胃兪)に顕著な反応を見つけました。
胃の機能低下が左肩に影響が出ることはよくありますが、右肩に出ることは…??
ダメもとでそのツボを押さえながら、右肩の筋力テストをすると…

「…(エッ!)力入りますねぇ?」
「…は、はい、入ります。」
「上向きに寝て下さい!!」


私の頭の中では左脳(論理脳)が「ありえへんありえへん、ムダムダ」と横槍を入れてきますが、そこは無視して胃に内臓整体を施した所、右肩の筋力低下は改善されました。

プロ野球楽天の野村監督は「根拠のないサインを出すな」と若い捕手を指導されるそうですが、はっきり言って強い根拠はありませんでした。
ただ現場では追い詰められていたこともあり“!”に従ったのです。
(あとで調べると横隔膜を支配している横隔神経という神経が胃の方にも行っており、その神経を介した関連痛だったとは思うのですが、なぜ左肩ではなく右肩に症状が出たのかは、今もよくわかりません。)


そういえば私は中学時代、数学の証明問題は大の苦手でした。
“∴”←こいつです。今見ても憎々しいです(笑)。

とはいっても色々な面で、基礎工事をおろそかにし、プロセスをないがしろにする事で痛い目にもさんざん遭っていますので、その辺は本当に大切だとは思うのですが、今回は幸いきわどい所で結果オーライ、現場処理万歳、ということになりました。



で、この大工さん、この半年間は不本意ながら、あまり肩に負担のかからない仕事だけをされていたそうですが、最後帰り際にこう言っていただきました。

「ハハハ、…いやぁ、ホンマに不思議な感じですわ(ぎーこぎーこ)!」

「ハハハ、そうですか…(私もそう思います!)、ハハハハ…」

…汗かきます(笑)。